
関西のコーヒー器具専門店COFFEE LAB KOMAMEYAのこまめです!
今回は前回の記事に続き「品種・銘柄が違っても、硬度が近ければ粒度分布の結果は似てくるのか?」という疑問について検証していきます。




前回の記事の内容を振り返ると、焙煎度に関わらずコーヒー豆の硬度が粒度分布に影響を与えることがわかりました。
ということは、硬度が同じであれば品種・ロット違いに関わらず再現性の高い検証ができる可能性があります。
また抽出においても、焙煎度の指標となる”アグトロン値”よりも硬度を考慮する方が適切なメソッドを構築できる可能性も高いと言えるかもしれません。
そこで今回の検証においては、コロンビアの農園違い・規格違いのコーヒー豆を用います。
- 国名:コロンビア
- 等級:エクセルソ(スクリーンサイズ16以下)
- 品種:ミックス
- アグトロン値:59.88-72.74
- 国名:コロンビア
- 等級:スプレモ(スクリーンサイズ17以上)
- 品種:ミックス
- アグトロン値:58.98-71.10
同じコロンビアのコーヒーですが、収穫地域・品種の混合比率・スクリーンサイズが全く違うため比較検体として適切と判断しました。
検証条件と方法
今回の検証においては初めに硬度の検証を行った上で、JIS規格の試験条件を満たす電磁篩振とう機を用いて3回の検証を行いました。
硬度検証結果
硬度の検証はランダムでコーヒー豆30個を取り出し、水平環境・一定速度の加圧機を使用し破壊強度を確認しました。


- エクセルソ:平均 5.32kg/中央値 5.0kg
- スプレモ:平均 5.07kg/中央値 5.0kg
コーヒー豆のような農作物は1つ1つの強度が一定ではなく偏差が非常に大きいため、平均値・中央値の両面から近しいと判定した検体を用います。
粒度分布の検証方法について
上記2検体を下記の条件にて3回試験を行い、3回の試験中の偏差と各篩ごとの偏差を確認しました。
- グラインダー:MAZZER philos
- 検体使用量:100g/回
- 振とう時間:10分
- 振とう幅 :一定(具体的数値は非公開)
- ロス率:0.31〜0.47%(1%を超えた場合、検証として不良)
試験回数を1度にしないことでグラインダー由来の粒度のバラつきによる変数を割り出し、純粋な硬度由来の違いについて比較できるようにしています。
偏差の評価基準について
粒度分布評価においては、各篩区分ごとのばらつきを変動係数(CV)で確認します。
- 一般的にCVが5%未満であれば「ばらつきは狭い」
- 10%を超えると「ばらつきが広い」 とみなす
上記の基準は土質工学や粉体工学で採用されている基準を参照し、バラつきの範囲の根拠として当検証の基準値とします。
結果の概要
両検体の3試験分の粒度分布をグラフにて表示すると下記の通りとなりました。


各篩区分において分布割合の変動係数は全て10%以内に収まっており、グラフの目視上でもほとんど結果が一致していることがわかります。実数値で見れば、100g中で1gにも満たない数値差です。
一方で検体ごとの変動係数は、主要な粒度帯(425〜849μm/全体の50%を占める粒度帯)で5%以内、その他粒度では10%〜15%の範囲で変動した点が一致していました。
つまり検体による変数は小さく、グラインダーによる破砕挙動の偏差・或いは100g中に含まれる検体の偶然性(硬度の高い検体の割合が高いなど)が存在することが今回の検証で判明しています。
どちらにしても粒度検証において信頼性の高いデータを割り出す際には、一定回数の試験が必要なことも数値として表れていると言えるでしょう。
結論・まとめ
今回の検証から、硬度が近ければ異なるロット・銘柄でも粒度分布は近似することが確認できました。
つまり「浅煎りか中煎りか」といった焙煎度の違いだけでなく、豆の硬度そのものが粒度分布の支配的な要因であると考えられます。
もし前回の記事と合わせて抽出に役立てるとすれば、豆の種類やアグトロン値に関わらず硬度から微粉の発生量を推測して挽き目を調整するということも可能です。


また検証から1回ごとの分布に偏差が見られるため、これがコーヒーミルの精度由来なのかは今後のミルごとの検証により、どの程度が許容範囲なのかが判明していくと考えられます。
今後複数のデータが集まった際は、改めて研究結果としてレポートする予定です。
当検証は局所的な条件に焦点を当てた検証のため、具体的な検証数値の詳細な統計値(D10・D16・D50・D84、幾何標準偏差、加重標準偏差など)は一般公開していません。
コーヒー豆の検証に必要なデータとして有料PDFレポートにて販売は可能です。ご興味のある方は問い合わせフォームまたは各種SNSのDMよりお声掛けください。
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] […]