
超ディープなコーヒー研究室へようこそ!
前回の記事に引き続き、実際の体験会における欠点豆の飲み比べ評価・CS One追加検証に関して執筆します。


体験会は2025年5月14・15日に実施し、ありがたい事に10名以上の方にお越し頂けました。





平日かつゴールデンウィーク明け後やから、来るか心配やったな
体験会にはロースター・生豆卸業者・機材商社・経営者・バリスタなど、コーヒーに関連する方々にお越し頂きました。



JCRC(Japan Coffee Roasting Championship)チャンピオンや調理専門学校の講師も来てたよね!



お客様が持ち込んだ”手選別済みの生豆”の再選別とロブスタ・アナエロビックの選別も面白かったな


飲み比べ評価に関しても、こまめ家以外の客観的評価も得られました。



どんな実績があっても、僕の検証もあくまで一個人の官能評価ですからね
今回は、以上の体験会を通して気付いた検体評価の共通点やCS Oneの追加検証の結果をチェックしていきます。
欠点豆飲み比べ評価の共通点について
ブラインドチェックの結果
今回はお客様の希望に合わせて、ブラインド或いは情報を公開した上でカッピングを行いました。


検体の分け方については、前回の記事と同様の区分となります。


- A:CS ONEによる選別後のクリーンロット
- B:選別前の生豆ロット(欠点豆混在)
- C:選別で除去された欠点豆のみ
A,B,Cどの検体も同じ焙煎方法で、アグトロンの物理評価もほぼ同じです。
結論から言うと、ほとんどの人がAの検体に対して“美味しい“或いは“これだけ違う“という評価を得られました。



B,Cについては、わかりやすい時とわかりにくい時があったな
というのも、やはり入っている欠点豆の量や質に偶然の違いが発生することがあるためです。





Cは総じて余韻を阻害していましたが、比較的Bよりもマシだったりとバラつきを感じさせますね
やはり欠点豆が取り切れていないと、カップに思わぬ欠陥が発生するということが結果から汲み取れました。
トップロースターによる評価の共通点
今回カッピングにおいては、ロースターの中でもトップレベルの実力を持つ方々にも違いをチェック・言語化していただきました。





名前は伏せますが、大会出場を目指す焙煎士であれば大抵の方は知っている方々ですね!



特に示し合わせたわけでもないのに、評価についてほとんど同じ事を言ってたのがびっくりしたな
まとめると、下記のような共通した評価がありました。
- Aの検体は適切に糖のフラグメンテーションを起こしている
- 余韻まで着目する人であれば違いに気付ける可能性がある



フ、フラグメンテーション?



fragmentationは「断片化、分割」という意味を持つ単語ですね
”糖の”という言葉がある通り、コーヒーの焙煎科学上のフラグメンテーションは主に「糖などをより小さい単位に分解する」という意味で用いられることがあります。



焙煎論の目線で言えば”分解する”だけでは意味が通らないので「分解された物質が反応性を持つようになる現象」という狭義の意味で用いられることが多いですね



コーヒー豆に含まれる糖類が焙煎中に特定の反応を起こす物質に分解されて、それが反応している事を”フラグメンテーションが起きている”という一言で表現しているわけね



で、フラグメンテーションが起きたからどうなるんや?
簡単に言うと、酸の形成や焙煎由来の香気成分の生成に影響します。
引用文献はコチラ
Sucrose in coffee beans is rapidly degraded on roasting. Early reaction products are the invert sugars, fructose and glucose, as well as 1,6 anhydro-glucose, arabinose and erythritol. These primary reaction products then react in a number of ways:
Fragmentation to form low molecular weight pro-ducts such as aliphatic acids. Most of the acids generated during coffee bean roasting are formed during the early stages. Ginz et al. (2000) have shown that the carbohydrate fraction, in particular sucrose, was the main precursor. The principal acids generated from carbohydrate were formic, acetic, glycolic and lactic (in order of decreasing molar yield).
引用:Coffee:Recent Development/R.J Clarke&O.G. Vitzthum/13P
コーヒー豆に含まれるショ糖は、焙煎によって急速に分解されます。初期の反応生成物としては、転化糖であるフルクトースやグルコースに加え、1,6-アンヒドログルコース、アラビノース、エリスリトールなどが挙げられます。これらの一次反応生成物はその後、さまざまな反応経路をたどります。
**低分子の生成物(例えば脂肪族酸)を形成するためのフラグメンテーション(分解反応)**が起こります。コーヒー豆の焙煎中に生成される酸の多くは、焙煎の初期段階で形成されます。
Ginzら(2000年)は、炭水化物分画(特にショ糖)が主要な前駆体であることを示しました。炭水化物から生成される主な酸は、**蟻酸(formic acid)、酢酸(acetic acid)、グリコール酸(glycolic acid)、乳酸(lactic acid)**の順(モル収率の高い順)でした。



ほうほう、酢酸とか乳酸って焙煎で増加するんやな



また、ショ糖分解後の1次生成物がカラメル化を起こしキャラメルのような甘い香りも生成しますね
欠点豆においてはショ糖のような前駆体が不足している可能性があるため、Aと同様の香気成分の生成ができなかったと考えられます。



未成熟豆や劣化豆に関する学術文献で、クロロゲン酸の含有量が少ない事など化学組成の違いが明らかになっていますからね!
参考文献一覧
話を戻すと、Aは適切なフラグメンテーションが起きていることで酸味と甘い風味が長く感じられるコーヒーだったという評価でした。
ですがB,Cに関しても検体ごとのバラつきがあるものの反応は進んでいるため、余韻の印象を考慮しなければ違和感なく飲めてしまいます。


実際に味をブラインドチェックしていただいた際も「え、全部美味しくないですか?」という感想を何度か頂きました。



前回の記事で僕がブラインドチェックした時も、基本的に余韻の印象で判別していましたね
以上の事から、欠点豆の除去により”コーヒーの品質をより良い方向に向上させる”という側面を感じられる評価となりました。
参加者が持ち込んだ生豆の選別結果
今回は参加者も生豆を持ち込んでCS Oneで選別する事ができるのですが、参加者自身で選別した豆の持ち込みもありました。





1つが未選別で、もう一つが選別済みの豆やったな
入れた結果は・・・


- 選別前:12%
- 選別後:10%



え・・あれ?
確かに選別後の欠点数そのものは減りましたが、選別した労力に見合った結果にはならなかったと言えます。


実際に見てみると、見えづらい箇所に虫食いがあったり部分的に変色している豆や割れ豆が主に選別されていました。



欠点豆の選別って確かに1つ1つ全方向見ないから、普通に考えれば見落としがあっても不思議じゃないよね~



以前の記事でも紹介しましたが、人間の目は意外といい加減なんですよね


ということは、CS Oneがあれば事前の手選別すら不要と言えるでしょう。
まとめ・総括
今回の体験会は、欠点豆が官能評価に与える論理的背景を垣間見る貴重なサンプル事例となりました。


更に選別精度と速度を鑑みれば、人件費と導入費の単純なコスト比較ではないという事も明らかになってきています。



言ってみれば、生豆の選別って動作はシンプルなくせに難易度が高い作業なんよな



その割には結果が見えにくいから精神的ダメージも蓄積しやすいしね
以上の事から、生豆選別を自動化するメリットは自信を持って”ある”と言えます。


CS Oneについて気になる事や注文の相談があれば、コメントや問い合わせまでご連絡下さい。



あなたの環境を鑑みてアドバイスできるので、いつでもお気軽にどうぞ!



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