その名前の通り、コーヒーの濃度を数値化できる装置です。
上手く使えれば、抽出したコーヒーの改善点も簡単に判ります。
そんな濃度計でも1番ポピュラーなのが、株式会社アタゴの製品です。
その名も
「PAL-COFFEE」
恐らく、ネットで調べても違いがわからないと思う方も多いと思います。
◾︎Brixってなに?
◾︎TDSの調整方法がわからない
◾︎収率・TDSが適正値なのに不味い
今回はそんな方ために、濃度計の仕組み・使い方・数値の見方を詳しく解説します。
ATAGO(アタゴ)とは?
株式会社アタゴは1940年創業、社員200名から構成される日本の老舗メーカーです。
創業当時から屈折計を手掛け、手持ちタイプを開発したのは1953年。
1960年頃には、屈折計=アタゴの基盤が出来上がっていたようです。
国内:80%
海外:30%(154ヵ国展開)
国内では不動の地位で、アタゴの右に出るメーカーはありません。
ちなみに、アタゴのサイトは製品の話も含めて読み応えがあります。
屈折計とは?
スネルの原理に基づき、光の屈折現象を測定する装置が屈折計です。
光が異なる物質間を移動する時、光の速度は変化します。速度が変化した光は、物質の境界面で折れ曲がります。
固形成分が含まれていても、屈折率と比例関係にない成分があるからです。
その方法について、Brix値とTDSでそれぞれ詳しく説明します。
Brix値とは?
Brixとは、屈折率を用いて水に含まれる可溶性固形成分を数値化したものです。
ミネラルなど、水に溶け出す成分全てを指します。
もしコーヒー抽出に使う水が普通の天然水なら、以下の成分がBrixとして表示されます。
◾︎コーヒーの成分
◾︎ペーパーフィルターの成分
ここで複雑なのが、可溶性固形成分の量がBrix値と一致しない点です。
つまりBrix値では、抽出したコーヒーの濃度を正確に測定できません。
アタゴはここに独自の係数を用いて、コーヒーの濃度を算出しています。
TDSとは?
TDSはTotal Dissolved Solids(総溶解固形物)の略です。
Brix値と違い、TDSは測定対象成分の係数を用いて屈折率から固形物の量を割り出します。
というのも屈折計を用いる場合、本来純水でキャリブレーションする必要があります。
校正・調整のこと。屈折計では水(脱イオンした純水)を用いて屈折率の基準値を0に設定します。
しかし、天然水の成分量は微細な誤差のため数値に影響を及ぼしません。
というように、TDSの大半がコーヒーの成分という事になります。
実際は係数で算出するので「TDS≒コーヒーの濃度」が正しいです。
TDSの変化と味の影響
TDSをコーヒーの濃度として考えてみましょう。
当然濃度が高いほど、コーヒーの味わい濃く感じます。
しかし、濃い・薄いの感覚は人によって違います。
一応コーヒーにおいては「1.15~1.35%が適正」とSCAが定めています。
正確な検体を得るには、濾過穴が0.5μm以下のフィルターを通します。
つまりペーパーで濾しただけでは正確な測定ができません。
濾すには下記のようなシリンジフィルターが必要です。
という時点で、普段使いにおいてSCAの数値を参照するのは非現実的です。
ですので、基本的に適正値は無視する事をオススメします。
数値は推測通りに動くので、抽出の参照値として有用です。
TDSを調整する方法
TDSは以下の方法で変化をつけることができます。
②抽出時間を変える
③挽き目を変える
④湯と豆量の比率を変える
上記の方法を駆使して、後述の収率とのバランスを調整します。
収率とは?
定義
収率は、コーヒー粉に含まれる可溶性固形成分がどの程度移動したかを表します。
本来は以下の式で収率を計算できます。
固形分量の算出方法で最も有効なのは、コーヒーを蒸発させる事です。
しかし、この方法は研究機関でもない限り非効率極まりないでしょう。
その結果生まれたのがTDSなので、これを使って式を代入します。
上記が様々な解説で取り扱われている式です。
しかしTDSが正確でなければ、収率も同様の扱いとなります。
収率でわかる味の違い
正直、コーヒーの味を決める大部分は濃度よりも収率になります。
というのも、コーヒーには溶け出す速度の違う成分が含まれているからです。
温度・挽き目・時間に関係なく短時間で抽出されやすい。
苦味成分について
早いものから遅いものまである。遅いものほど、渋みを伴う重い口当たりになる。
収率が変われば、コーヒー中の酸味と苦味の割合が変わるという事です。
例えば収率が低い場合、早く抽出される成分の割合が多い事になります。
なので酸味が強過ぎる場合、収率を上げると飲みやすくなる可能性があります。
適正値が不味い理由
そう感じる理由は2つあります。
◾︎豆の成分によるもの
TDSは先に述べた通り、高精度の測定が必要となります。
もう一つは、ネガティブな成分が多い豆が存在する事です。
豆ごとに味が違うのと同様、どの程度で雑味が勝るか一律に決まっていません。
コーヒー濃度計の効果的な使い方
TDSと収率を上手く利用すると、自分が美味しいと思えるコーヒーが作れます。
まず、推奨値の事は無視して以下の点を押さえておきましょう。
②TDSが上がる:濃厚な口当たり
③収率が下がる:成分の移動が少ない
④収率が上がる:成分の移動が多い
上記の事実を利用して、コーヒーの味を調整できるという事です。
例えば、淹れたコーヒーを検証して以下の事実が判明したとします。
◾︎収率:18%
◾︎風味評価:舌・喉に刺激が残る渋味
◾︎口当たり:水っぽく感じる
上記の場合、渋味を減らして濃厚にできれば好みの味になる可能性があります。
というように、自分好みの味に近付ける目安を探るために濃度計を使用します。
それについては、別の記事で詳しく紹介します。
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