Coffee Value Assessment(CVA)とは?スペシャルティーコーヒーの新定義から解説!

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こまめ

ディープなコーヒー研究室へようこそ!

今回の話題はCoffee Value Assessment(CVA)についてです。

CVAはSpecialty Coffee Association(SCA)が2024年に発表した新たなコーヒーの価値評価システムで、現在コーヒー界隈における変革の起点となっています。

みーま

2004年から始まった従来のコーヒーの価値評価のシステムが大幅に変更されたのよね

たろ

って事は古いSCAのカッピングフォームとかは廃止になるんか?

こまめ

“取って代わるものになる”という表現で止まっているので、廃止かどうかは明言されてませんね

このように”どうなるか見通しが立っていない”という現状から、業界が注視しています。

そんな中で、CVAの実践的トレーニングと周知を兼ねた”CVA for Cuppers”というコースが開始されました。

合格すると認定証が発行されます
みーま

CQIのQグレーダー資格持ってる人とか、CVAに興味がある人にとっては結構重要なコースよね

今回はこの”CVA for Cuppers”を実際に受講した上で、渦中にあるCVAがどんなシステムなのか詳しく解説します。

こまめ

それでは行ってみましょう!

目次

SCAとは?

先にCVAの生みの親であるSCAについて触れておきます。

SCAは2017年にSCAAとSCAEが統合して生まれた組織であり、世界のコーヒー業界の中核的存在です。

たろ

ワールドブリュワーズカップ(WBrC)とか色んなコーヒーの大会も毎年やってる組織やんな

こまめ

コーヒーに関する科学的な研究や経済的なアプローチにおいても、SCAは様々な知恵を集約した重要機関と言えますね

そしてSCAAは統合前から、コーヒー豆の品質を評価するシステムであるプロトコルとカッピングフォームを所有していました。

たろ

このカッピングフォームを用いてコーヒー豆を評価するシステムは、元々はコーヒー農家のために作られたものやったんやな

みーま

育てているコーヒーの風味を理解して農家が品質改善できれば、市場価値も相対的に向上するっていうサイクルが生まれるわけね

このようなシステムを用いながら、SCAは”スペシャルティーコーヒー”という認知を拡大させる事に成功しました。

たろ

ちなみに日本のSCAJは、SCAとは関連性が無い独立した組織やから混同に注意やな

こまめ

SCAJが行うカッピングの形式や評価方法はSCAが提示する手順と大きく異なるので、時折SCAのトレーナーを困惑させる事があるそうですね

また、SCAは国際的に認知度の高い Coffee Skills Program(CSP)という資格認定制度を提供していますが、SCAJはコーヒーマイスターなど独自の国内資格を作り提供しているのが実情です。

こまめ家はCSPのGreen Coffee-Foundationなど取得済
たろ

コーヒー業界におっても「CSP知らん」って人も多いからな

みーま

日本で認知されている資格のほとんど(コーヒーインストラクター等)は、国内の法人が独自に作った認定制度だもんね

そのため今回のような国際的に認知される機関の変革が発生すると、得られる知識の隔たりが大きくなる可能性があるのです。

こまめ

コーヒーに深く携わりたい方は、基本的にSCAという組織をチェックしておく事をオススメします!

Coffee Value Assessment(CVA)とは?

改めて説明しますが、CVAは2024年にSCAからリリースされた新たな評価システムです。

みーま

2004年にSCAの評価システムが開発されたから、20年ぶりに変更って事になるのね

たろ

「従来の形式がいい!」って声も出るくらい以前のシートも評判は良かったけど、なんで変更に踏み切ったんや?

こまめ

理由については様々な憶測も飛び交っていますが、今回はSCAの発表とニュースに基づいて整理しますね

スペシャルティーの定義が変化

まず、CVAに変更されてからのスペシャルティーコーヒーに関する記述が変化している点はチェックすべきでしょう。

従来の「スペシャルティーコーヒーとは?」に対するSCAの回答は下記の通りでした。

従来のスペシャルティーコーヒーの定義(SCA)
  • SCAプロトコルに従った手順でカッピングを行なっていること。
  • カッパーによる評価点が80点以上。
  • グリーングレーディング(350g)において一次欠点が0点。2時欠点が5点以内。
  • 焙煎豆(100g)におけるクエーカーが0個

上記の条件を満たすコーヒーをスペシャルティーコーヒーとして定義していました。

たろ

見ただけでも厳しそうな条件やから、一定のクオリティが必要なのはわかるよな

みーま

だから「大抵のコーヒー屋が謳ってるスペシャルティーコーヒーは本物のスペシャルティーじゃない!」って声が一定数あったのね

しかしCVAが登場して以降、下記の通りに書き換えられました。

What is Specialty Coffee?(原文)

Specialty coffee is defined by the Specialty Coffee Association (SCA) as a coffee or coffee experience that is recognized for its distinctive attributes, resulting in a higher value within the marketplace.
引用:https://sca.coffee/research/what-is-specialty-coffee

日本語訳(直訳)

スペシャルティコーヒーは、スペシャルティコーヒー協会(SCA)によって、その独特の属性が認められ、市場内でより高い価値をもたらすコーヒーまたはコーヒー体験と定義されています。

たろ

え!?点数とかの基準どこいったん!?

ここが重要なポイントで「そもそも取引相手は点数見てコーヒー買ってないし、スコアシートの説明描写にも限界ありますよね?」という考えが根幹に存在しています。

みーま

今までは消費者や卸先がスコアシートを見ただけじゃ、どんなコーヒーか思い描く事が難しかったって事ね

なのでCVAは新たな評価を用いて綿密に描写可能な共通言語を増やし、市場がスペシャルティーコーヒーの価値を認識できるよう改善したという事です。

こまめ

これをSCAでは“high-resolution(高解像度)“と表現していますね

たろ

でも、これってスペシャルティーコーヒーの定義が今まで以上に曖昧になってくるよな?

確かに「スペシャルティーコーヒーとは具体的に何?」と考えるコーヒーユーザーは、特定のカッピングセミナーを受講したり、明確な答えを求める傾向があります。

つまり「スペシャルティーコーヒーとは?」は“明確な枠組みを知らないと他の誰かに説明ができない“という前提から生まれる疑問なわけです。

たろ

だから受け取る回答に定量的(数値的)な文言が無い定義を掲げられると、腑に落ちないまま帰ってくるってわけか

そして、それが意味するところは“説明する側に相手を納得させるだけの描写能力が必要“という事です。

今までは“80点以上“という数値が補助になりましたが、その補助輪を外した状態で「スペシャルティーコーヒーとは何か?」を説明する必要があります。

こまめ

だから前提として、深い理解と言語能力を強制的に求められることになるんです

みーま

ある意味で“80点以上“という文言に頼って回避できてたってことだもんね

なので“新たな表現を用いてどこまで受け手が納得できる描写ができるか“がCVAのテーマでもあるわけです。

こまめ

これで定義に依存した“本物のスペシャルティーコーヒー“という概念やマウントが通用しなくなりますね!

たろ

より深くスペシャルティーコーヒーについて思考できるって捉えるのがええやろな

属性という概念が登場

たろ

そもそも定義で気になってんけど、属性ってなんや?

こまめ

SCAの定義を確認してみましょう!

属性とは?(原文)

A property that is characteristic of something; a quality or feature regarded as a characteristic or inherent part of a coffee. A product (or coffee) can be thought of as a collection of attributes. Well-defined attributes can be identified using a variety of methods.
引用:AW_SCA-102_Sample-Preparation

日本語訳(意訳・直訳含む)

あるものの特徴を示す性質のこと。コーヒーにおいては、その特徴的または本質的な要素と見なされる性質・特徴を指します。
製品(あるいはコーヒー)は、さまざまな「属性」の集合体として捉えることができます。
明確に定義された属性は、さまざまな方法によって識別することが可能です。

スペシャルティーコーヒーの新定義にもあるとおり“属性”は説明できなければならない重要単語なので要チェックです。

こまめ

“属性”という単語自体は文字通りの認識で問題ありませんが、CVAにおいては更に具体的な区分を知る必要がありますね

属性の区分について(原文)

Specialty coffee (see definition in section 4) acquires value because of its attributes, whether intrinsic (related to the material reality of a coffee) or extrinsic attributes (the informational or symbolic attributes of coffee).
引用:AW_SCA-102_Sample-Preparation

日本語訳(意訳・直訳含む)

スペシャルティコーヒーは、内在属性(コーヒーの物理的・現実的な側面に関連して)または外在属性(コーヒーの情報的または象徴的な属性)によって価値を獲得します。

上記をより分かりやすく区分すると、下記のようになります。

属性の区分一覧
  • 内在属性:コーヒーの風味・物理的サイズ・損傷・欠点・品種など
  • 外在属性:生産国・農園名・認証など
たろ

例えるなら、内在属性は「これはゲイシャ種のコーヒーでフローラルとシトラスの香りが特徴的です」って事か

みーま

一方で外在属性は「これはエチオピアの〇〇農園で、有機JAS認証を取得したコーヒーです」って事ね

つまり今後のコーヒーは、これら2つの属性を総合して価値を測定するという考え方にシフトします。

たろ

って事は”このコーヒーは品評会で3位になりました”も評価対象?

こまめ

そうですね

みーま

それだけ外在属性が市場で評価されてるって事よね

例えば「パナマ・コンペティション入賞・ゲイシャ種」という情報を得た上で試飲をする場合、試飲前からコーヒー豆に対する期待値が高くなるのは容易に想像できるはずです。

ロースターであれば「ベネズエラのコーヒーか‥味は普通だけど国で差別化できるから買おう」というような決断も、外在属性が購買の意思決定に寄与していると言えます。

また、この”属性”は文化によって異なるため、必ずしも”業界的に価値が高い”ものが消費者からして良いものではないという捉え方も必要となります。

このように”属性”という言葉の登場によって、今まで「価値の高いコーヒーはこれだ!」というステレオタイプな発信から多様的な理解への移行が求められているのです。

たろ

属性、覚えといてや!

“属性の連続性”を重要視

こまめ

前述の話に関連して重要なキーワードはAttributes continuum(属性の連続性)という概念ですね

これは過去に重視されていた”80点以上かどうか”という合格ラインのようなシステムがある問題を生んだためです。

たろ

80.25点と79.75点の豆の価値が大きく変わってしまうって事やな

本来は点数の差が少ないのであれば、価値の隔たりも少ないはず。

しかし、そのライン引きによって”80点未満”という枠組みにまとめられしまうのが旧システムです。

よって79.75点の点を与えられた農家は経済的・意欲的な面でコーヒー栽培を持続できなくなります。

この事からも”80点以上”というボーダーを撤廃し、2つの属性評価により価値の隔たりを無くす事がCVAに期待されている今後の役割と言えるでしょう。

たろ

誰にとっての評価なのか、CVAは考えさせてくれるな

属性を評価する4つのフォーム

こまめ

前述の2つの属性を評価する方法として、CVAでは下記の4つのフォームを用います!

CVAにおけるフォーム一覧
  • Physical Assessment(物理的評価/内在属性)
  • Descriptive Assessment(記述的評価/内在属性)
  • Affective Assessment(感覚的評価/内在属性)
  • Extrinsic Assessment(外在的評価/外在属性)
たろ

めっちゃ増えとる!!!

こまめ

Physical Assessmentはグリーングレーディングのシートと類似しているとしても、2種追加されているように感じるかもしれませんね

実際には旧SCAカッピングフォームがDescriptiveとAffectiveに分離しただけなので、今までと全く違う評価軸はExtrinsic Assessmentのみです。

ただしDescriptiveとAffectiveは別々にカッピングするため、手間として1段階増える事には変わりありません。

たろ

あれ?DescriptiveとAffectiveをくっつけたCombined Assessment(統合評価)なら1度に評価できるんちゃうん?

SCAの「A System to Assess Coffee Value」によると”Combined Assessmentは特定の場面において、2つのセッションが現実的ではない場合に用意している”と記載があり、時間・準備を省く際に使用するというニュアンスに近いと考えられます。

こまめ

これは「CVA for Cuppers」の講習内においても”推奨しない”として明言されており、可能な限り別々で評価する流れがスタンダードと考えて差し支えないですね

たろ

でもなんで別々に評価せなあかんの?

その疑問に関して、次のセクションで紹介します。

主観・客観を明確に切り分けて評価する

前述のDescriptiveとAffectiveが切り離された理由として「人間の脳の構造上マルチタスクができない」という問題が浮上しました。

こまめ

Descriptiveが客観的評価、Affectiveが主観的評価として切り分けられていますね

旧SCAカッピングフォームでは主観的評価と客観的評価が混在しており、それらを同時処理するような構造になっていたのです。

たろ

SCAの調査で旧フォームを使用していたユーザー(1,500人以上)のおよそ半数が「このシートは主観的だ」って回答してるんよな

みーま

コーヒーの価値を測定するのに、主観が根幹にあったら正確性も何もないよね

故にQグレーダーはこの主観的な部分に関する評価を”可能な限り一定の基準に揃える”訓練を行っているため、生豆の評価機能として貴重だったわけです。

つまり旧フォームを使いこなすには、一定の高度な訓練が求められるというハードルが存在していたことになります。

こまめ

これを脳科学に基づいて2つに切り分けることで、ある程度の訓練で誰でもカッピングフォームにアクセスできるメリットが生まれたんですね

こまめ

ちなみに、この2つを必ずしも同時に扱う必要はありません!

例えば自身の顧客からアンケートを取るためにAffective Assessmentのみ記載を依頼できたり、使い方の自由度が格段に向上しています。

たろ

各シートの詳しい書き方・CATAの使い方については、今後の記事で掲載するから待っててや!

評価項目にSweetnessが追加

DescriptiveとAffectiveの2つの評価シートには”Sweetness”が評価項目として追加されました。

みーま

あれ?旧SCAフォームにもSweetnessってなかった?

旧シートの方はコーヒー豆の欠陥を確認するための”減点項目”でしたが、CVAでは通常の評価項目として採用されています。

これはSCAがアンケートにて旧シートの改善項目を求めた際に、要望が非常に多かった項目だそうです。

たろ

でもコーヒーの甘さって”どんな分子が甘さを感じさせてるか”科学的に証明されてないやろ?どうやって「甘い」って客観的に説明するん?

CVAの記述評価においては「味と香りの両面から包括的に評価する」とのことから、舌で感じる味と香りの両方から”甘さ”がもたらされていると示されています。

さらに突き詰めれば、SCA公式の記事に”Explore Your Perception of Sweetness”と記載されている通り「自分がどんな風に甘さを認識してるか探ってね!」というのが答えです。

例えばオレンジのような香りを”甘い”と認識している人もいますし、キャラメルの香りやスイートコーンのような穀類の味が甘いと感じる人もいます。

自身が感じた内容を複数の他者に説明する際に「キャラメルのような甘い香りがします」と説明すれば、どの程度の人間がその内容に同意するのかも尺度になり得るのです。

たろ

その反応によって自身の説明の尺度が、どの程度他者に対しての説得材料になっているかも観察できるってことやな

こまめ

僕みたいに、ブラウンシュガーの検体を嗅いだ際に「え、ポテチのサワークリームオニオンの匂いするけど・・・甘いの?」みたいに捉える人間もいますからね

正直な話、公式の見解をチェックしても「甘さの尺度はこれだ!」という名言は避けられています。

そのことから”人によって感じ方は違う”が最も顕在化している項目であることは明白です。

こまめ

このSweetnessについては改めて詳しく取り上げようと思いますが、皆さんはどうお考えでしょうか?

みーま

コメント待ってまーす!

総括・まとめ

以上のようにCVAは非常に使い勝手のいい評価基準として活用できる画期的なシステムです。

こまめ

一方で、描写を精彩に描けるという事は非常に高い自由度が設けられていると言えますね

選択肢が増えるほど楽しみ方も多様になりますが、その反面高い説明能力を求められる事になるでしょう。

たろ

Descriptive Assessmentで強度スケールが全項目に採用されるし、Sweetnessの評価が追加されるしで目が回るわ

現状はスケールの実践的なセッションより”CVAの浸透”が念頭に置かれているため、具体的尺度については今後校正されていくと考えられます。

CVA for Cuppersにてフォームの内容すり合わせの様子
みーま

まず”主観・客観評価を分けて書く”って行為に慣れないといけないから、その練習からね!

今回のような大幅な改変が発生すると、中には「付いていけない」と感じるユーザーも発生するはずです。

こまめ

今後の日本市場で、どこまで浸透するかも注視していきたいですね

この記事が、皆様のCVAに対する理解に繋がる一助になれば幸いです。

こまめ

また、今後こまめ家のセンサリートレーニングではCVAに慣れるためのお手伝いもさせて頂きます。

トレーニングのご予約はコチラから!

当記事ではお伝えし切れない実技的な面も併せてCVAをより深く理解できるよう支援するので、是非チェックしてみてください。

みーま

その他CVAに関しての不明点とか思うところがあったらコメントしてね!

たろ

次回はAffectiveとDescriptiveのフォームについても詳しく紹介するから、SNSとかに登録して更新通知待っといてな〜

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